■「目」と言っても近頃急に進んだ「老眼」の事ではありません。自動車の「目」~ヘッドライトの事です。自動車のグリルを人の顔に例えるならヘッドライトは「目」に当ります。「目は」表情を作る重要なエレメントです。「猛禽類の目」とか「猛獣の目」とか鋭い目つきが、前方をしっかり睨む目つきに人は視線を感じ、そちらに目を向けたくなる・・・近年のトレンドらしいです。
■ 自動車のヘッドライト・デザインの変遷は、光源技術の進化とその時代〃の自動車を取り巻く環境変化に大きく影響を受けました。光源技術の進化とは、当初のアセチレンランプから、1909年に始まる白熱球~シールドビーム~電球交換式ヘッドランプ~ハロゲン球~プロジェクターランプ~HID(キセノンランプ)さらにはLEDの登場があります。また環境変化とはよりシビアになる環境性能の向上への要求、すなわち空気抵抗の軽減・LED採用等による燃費性能の向上。安全性の改善へのDRL(デイタイム・ランニング・ランプ)の義務化等、さらには各メーカーの営業戦略(差別化)等によるものです。
■ 当初のヘッドライトは光源から発せられた光を放射面の反射鏡(リフレクター)で前方に向かわせ、レンズカットのプリズム効果で配光をさせていました。後には反射鏡の配光技術が進化し、それに伴いレンズカットも変化することで異形ランプが登場します。80年代に現れたプロジェクターは集光レンズを使う事で、画期的な小型化に成功しました。この事により自動車のフロントデザインの多様化を可能としました。
■ そして上がNew Eクラス、右がNew CEとNew S500Coupeのヘッドライト。インテリジェントライトシステム・LEDハイパフォーマンスヘッドライトでは遂にフルLED化を実現・・・結構きてますねぇ!? これでもコンサバティブ(保守的な/控え目な)方で、他のメーカーにはもっと過激なものが多く見受けられます。
■「形態は機能に従う」とはアメリカの建築家ルイス・サリバンの格言で、ドイツ、バウハウスなどのモダニストの合言葉にもなりました。ドイツ合理主義とも合致した考え方です。そういう意味においては現在の技術水準からすると本来ヘッドライトはもっと小さくなって然るべきで、これはあまりに装飾的に過剰では?・・・と思う一方で、売るが為のデザイン(メーカーの差別化やアイデンティティの主張)がデザインの機能(役目)の一つと捉えれば、これもありかなと・・・
■ 左の写真は92’500Eのヘッドライト廻りです。当時は少し威圧的に感じたこの顔も、今日では程良く肩の力が抜けて親しみやすくなったように感じます・・・・・あくまでも私の主観ですが(六)